2000年に彗星のごとく現われ、グラビア界を席捲した藤代冥砂氏(49)。当時、光の使い方や露出の計り方を知らなかった異色のグラビアカメラマンは、なぜ女優たちのリアルを写し出せたのか。ハタチの広末涼子、井川遥、佐藤江梨子、池脇千鶴など印象深い女優たちとともに、真木よう子も藤代に強烈なインパクトを残した。
「スレンダーなのに胸がバーンとして、スゴかった。それもさることながら、中身はべらんめえ調で、すごくかわいらしい人でした。沖縄の海辺で撮影しているとき、『そこに座って』といったら、地面が濡れていたので嫌そうな顔をして睨んできた。それがかわいい! と思ってね。キッと睨みながらも座ってくれて。この子とつきあったら、こういう視線をたくさん浴びられるんだろうなと想像しました。本当の感情がポッと出る真木さんは好きですね」
デビューしたての石原さとみを連作で撮っているときは、彼女の透き通った印象から四万十川を連想し、高知出身の子(実際は東京出身)だと自分の頭のなかで勝手なキャラクターづけをした。「最近、田舎には帰っているの?」とか、その設定で話しかけていたという。
20年近く撮り続けて、女性は変化してきましたか? との問いには少し考えた。
「ファッションは女性の内面に影響力がある。ノーメイクや薄いメイクが流行ると女性は内面を磨き始める。反対に、塗ったりつけたりをどんどんしていくムーヴメントならば、中身は脇において、表層的にパッケージしようとする内面が生まれる。そういう、メイクやファッションの流行につられる変化はあるけれど、基本的に女性はワルというのは変わらない(笑い)。
彼女たちは、演技のプロだから、度胸がいいだけじゃなくて、僕ら男を見透かして、値踏みします。だからウソをつくんだけれど、彼女たちの世界では、ウソもリアルなんです。だから、ウソを見破って勝ち誇るのではなくて、『一番いいウソ、いただきました』と、的確にシャッターを押すのが、僕の仕事だと思うようになりました」