人は金銭や利害で動かされるものではない。それは「野暮」だと谷村は言う。人は“思い”で動くのだ。そして谷村の思いとは、「誰かが喜んでくれるから歌う」ということだ。
「今回、アルバム(※45周年を記念して発売された自身初となる3枚組のオールタイムベスト盤)に『STANDARD~呼吸~』と名づけたんですが、いい歌というのは、無意識に呼吸をするように人に寄り添っている。
歌に形はないけれど、歌は国境を越える。たとえば中国でもタイでも、多くの人たちが『昴』を歌ってくれている。そしていい歌は必ず100年後も残る。こう言うと、『100年後なんて生きてないよ』と口にする人がいるけど、約100年前に書かれた夏目漱石の『こころ』は今でも読み継がれている。僕もそういう歌を歌い継ぎたいんです」
谷村の45年の思いである。
●たにむら・しんじ/1948年生まれ、大阪府出身。今年4月にCD3枚組のオールタイムベスト盤『STANDARD~呼吸(いき)~』を発売、5/13にスタートした全国ツアー「谷村新司 45th CONCERT TOUR 2017 STANDARD」を実施中。
写真提供■ダオ 取材・文■角山祥道
※週刊ポスト2017年6月16日号