芸能

「透明な不倫ドラマ」 波瑠『あなそれ』の楽しみ方

番組公式HPより

 今クールでの話題性といえばこの作品が頭一つ抜けた感がある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が『あなそれ』について分析した。

 * * *
 いよいよ終盤にさしかかり、快進撃を続けているドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系火曜日午後10時)。数字も伸び続け、勢いが止まらない。今週の第8話はなんと視聴率が0.9ポイント伸びて13.5%へ。

 登場人物が「Wゲス不倫」に走るストーリーのため、とくに滑り出しの頃は賛否が分かれたこのドラマ。ですが、実は描き方が非常に新鮮で、いまだかつて見たことのない世界。

 夫の涼太(東出昌大)に不倫がバレた主人公・美都(波瑠)。あっけなく結婚関係を捨て妻は離婚を迫る。しかし夫はなかなか離婚届けに署名してくれない。二人の関係はねじれている。言ってみればこれはドロドロの対局、「透明な不倫ドラマ」。

「透明」とは、主人公・美都がカラッポということ。屈折や罪悪感や負の感情がない、ということ。暗さがなく湿度がない。ある意味空虚。そこが、これまでにはない面白味を生んでいるのではないでしょうか。時に涼太のブチキレ具合がすさまじく、あまりに極端で思わず腹を抱えて笑ってしまうようなシーンも。

 ドラマが始まった時は、まだそうした個性的人物や演出意図など全貌が見えていなかったこともあって、「主人公の不倫があまりにゲス」「最低過ぎて感情移入できない」「波瑠はなぜこんな役を引き受けたのか」など批判や疑問もわき起こりました。

 その時、波瑠は自らブログでこう決意表明。

「(美都は)私自身ですら共感もできない、応援もできないような女性」「共感できないけど、毎日やらなきゃ仕方ない」「けれど私は、自分が何か得をするためにこのお仕事をしてるつもりもない」「苦しくてもがいた時間の中から、自分が何を見つけられるかが大事」「苦労が大きければ大きいほど何かを自分の中に残してやる~って」「意味のない時間なんてないです」

 カッコいい。胸がスカっとする。

『あなそれ』が視聴者を惹きつけているのは、実はドラマ世界を支えている波瑠のこの「凜とした」ブレのない姿であり、まっすぐに伸びた背筋、ではないでしょうか?

 考えみれば「役者」とは、別の人物になりきる仕事。さまざまな人格になることこそ、仕事であり才能の発揮のしどころ。しばしば理解を超えたナンセンスな人間にも化けなくてはならない。そんな役回りが来た時はむしろ、自分の力を伸ばすチャンス。

 いつまでも『あさが来た』の「あさ」のままでよいはずがない。

「波瑠がこんな役柄を引き受けて幻滅」なんて言っている方が甘いのではないでしょうか。今回のドラマを巡って見えてきたのは、むしろ視聴者側の、フィクションに対する受け取り方の狭さなのかもしれません。

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
【薬物検査どころじゃなかった】広末涼子容疑者「体を丸めて会話拒む」「指示に従わず暴れ…」取り調べ室の中の異様な光景 現在は落ち着き、いよいよ検査可能な状態に
NEWSポストセブン
運転中の広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
《広末涼子の男性同乗者》事故を起こしたジープは“自称マネージャー”のクルマだった「独立直後から彼女を支える関係」
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(写真は2023年12月)と事故現場
《広末涼子が逮捕》「グシャグシャの黒いジープが…」トラック追突事故の目撃者が証言した「緊迫の事故現場」、事故直後の不審な動き“立ったり座ったりはみ出しそうになったり”
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
【広末涼子容疑者が追突事故】「フワーッと交差点に入る」関係者が語った“危なっかしい運転”《15年前にも「追突」の事故歴》
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン