今年に入って10回目となるミサイル発射により、ますます脅威が高まっている北朝鮮。だが、北朝鮮国内に目を向けてみると、急速な治安の悪化が止まらず金正恩政権の足元が揺らいでいるという。朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏がレポートする。
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北朝鮮の治安がどのような状態にあるかを知る手段の一つとして刑法の変化がある。北朝鮮は2000年以降、刑法を20回にわたり改正し、処罰の対象となる犯罪行為の範囲や刑罰の種類の調整を行っている。
刑法が頻繁に改正されている背景には犯罪の凶悪化がある。例えば、大都市では国家保衛省(秘密警察)や人民保安省(警察)【以下、「治安組織」と記述】の取り締まりにもかかわらず20~30人で構成される犯罪組織が存在しており、闇市場での生活必需品の密売や恐喝などを行っている。1990年代はこのような大きな犯罪組織は存在せず、組織といっても3~4人程度だった。
このほかにも、青少年グループによる強盗、窃盗、強姦などのさまざまな犯罪が急増している。2011年には3年間にわたり強盗を繰り返し、7人を殺害した10代の男女学生の犯行グループ15人が検挙されている。
◆刑罰の強化
刑法が改正のたびに条文が増加している。2004年の刑法では、「国家転覆陰謀罪」「テロ罪」「祖国反逆罪」「民族反逆罪」「故意的重殺人罪」が死刑となっていたが、2015年には、これに加え「破壊、暗殺罪」「麻薬密輸、密倍罪」が死刑となった。
このほかにも2015年の刑法には、無期労働教化刑として「国家財産故意的破損罪」「戦闘技術機材・軍事施設故意的破損罪」、最高5年以上10年以下の労働教化刑として「武器、弾薬、戦闘技術機材窃盗罪」、最高10年以上の労働教化刑として「武器、弾薬、戦闘技術機材、軍事施設故意的破損罪」、最高3年以下の労働教化刑として「麻薬、毒薬、爆発物の保管、利用秩序違反罪」などがある。これらは武器や弾薬、爆発物の管理がまともに行われていないことを意味している。
テロや破壊、暗殺といった犯罪が法律に記載されていることは、北朝鮮指導部がこれらの犯罪が発生する危険があることを認識していることを意味する。
貨幣改革(2009年末実施)の失敗直後からは、布告文や指示文を通じて「外貨不法流通時の死刑執行」(2009年12月)や「携帯電話を通じた秘密漏洩時の銃殺」(2010年3月)を発表している。その結果、多種多様な罪状で公開処刑が幅広く行われるようになった。