金塊やそれを買い付けるための大金を強盗するなど、金の密輸にからむ事件が多発している。大手の密輸業者によれば、金密輸による利益は最大でも消費税相当分の8%で、手がける者は半グレ集団が中心だという。金密輸の最前線にノンフィクション作家の溝口敦氏が迫る。
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半グレの中には1か月に1トン扱うグループが3グループあるとか。その場合、1業者が動かすカネは月間50億円に上り、儲けは最大4億円となる。また香港などの海外マフィアが参入するケースはほとんどない。参入のメリットがないからと業者はいう。
「1回数人の運び役は間に合わせで動員するから、ハンパな人間が多く、外に情報を洩らす。金塊や現金の横盗り事件が多いのはこういう連中から、買付資金の給付や売却の場所、日取りなどがバレるからです。
で、資金力があるグループは今、金塊を船で運ぼうとしている。それも特殊な浮き輪を用意し、金を入れると水深5メートルほどに沈む工夫をしている。この浮き輪を船で曳航して日本の港に入り、税関検査が終わった後、こっそり金を回収する段取りです」
確かにこれなら大量に金を持ち込めそうだ。多くの人間を動員する手間暇も経費も要らない。また金の先物取引を利用し、金を動かさず、書類上だけの取り引きで消費税の還付が受けられないか研究しているグループもあると聞く。
200万円以上の金の売買では売り手の住所や氏名の確認が求められる。身分が割れれば、後で税務署が把握し、消費税の支払い命令が来る。どうやってすり抜けるのか。