3つに割れた山口組を壊滅に追い込もうとする“第4の組織”がある。警察だ。これがチャンスと見た警察は、その3つの山口組のトップ一人を電撃逮捕。これが抗争にもたらす衝撃は、極めて大きい。
「携帯電話を機種変更する際、自分が使うことを隠した」──神戸山口組・井上邦雄組長が6月6日に逮捕された容疑は、携帯電話販売店から電話1台を騙して入手した詐欺行為という、大物組長には似つかわしくない“ショボい”罪だった。
井上組長が逮捕されたという一報以上に暴力団関係者を驚かせたのは、逮捕したのが「兵庫県警」ということだった。フリーライターの鈴木智彦氏は言う。
「実は逮捕の前日、京都府警の捜査関係者から『明日にでも井上を逮捕する』と聞いていた。その噂は暴力団筋ではかなり広がっていた。それなのに実際に動いたのは兵庫県警だったので驚きました。兵庫県警が、京都府警を出し抜いたということです」
兵庫県警の元暴力団担当刑事も「神戸山口組の拠点がある兵庫県警の面子がかかっていた。日頃からぬるい捜査を揶揄して“お公家さん”と馬鹿にしていた京都府警に手柄を持っていかれる訳にはいかない」と認める。タイミングも絶妙だった。逮捕前日の5日、全国の警察本部長を集めた会議で、坂口正芳・警察庁長官はこう宣言した。