「船で24時間かかって小笠原諸島の父島に到着したところです。毎年やっている調査で、これから1か月半滞在して、10島ほど無人島を回って海鳥などの生態調査をする予定です。
今は雨がザーザー降っています。雨が降ると鳥は飛ばないし、普段とは違う行動をして調査ができません。まあ、そういう天気なので仕方ないでしょう。小笠原はもうすぐ梅雨が明けるので、そうすると海も凪いで調査にうってつけの季節になる。ほら、無人島って桟橋とかないので、海が穏やかじゃないと上陸できないんですよ。
今日ですか? 別の仕事で、噴火中の西之島(東京都)の周囲をクルーズ船で見てきました。地響きのような音を響かせて噴火していましたよ。去年は上陸して海鳥の調査ができたんですけど」
電話の向こうで、川上和人氏(44)はそう話した。同氏は国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所の主任研究員で、ベストセラー『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』の著者である。
取材依頼をすると研究所のスタッフが、「先生は今日から出張なんですよ……」と応対。戻ってきたところで取材したいと伝えると「いや、離島に行ってしまって、1か月以上は戻りません」というのである。