数多の有名社長を輩出する慶應義塾大学。財界での影響力、存在感においては最高峰・東大をも凌ぐほどだ。東京商工リサーチの2015年12月段階の調べによると、上場企業社長出身大学ランキングで1位は慶應の321人。早稲田の230人、東大の219人と続く。その勢力の源には、慶應OB組織「三田会」の存在がある。36万人を超える「塾員」たちの結束力と人脈は、企業再編にまで影響を及ぼすといわれる。
「慶應卒」のパワーは時として企業再編の起爆剤にもなり得ることがある。『慶應の人脈力』著者の國貞文隆氏はこう語る。
「企業のトップに慶應出身者が多いので、それが縁で企業再編が起こることもあります。2008年に合併した三越伊勢丹が象徴的なケースでした」
老舗百貨店同士の提携を主導した伊勢丹の故・武藤信一社長は慶應卒。当時三越前会長だった中村胤夫氏も慶應卒で、統合が進んだ背景には、双方の企業内での三田会の存在も大きかったようだ。統合前にそれぞれの社内にあった三田会は現在、三越伊勢丹三田会となっている。そして4月に三越伊勢丹の社長となったのは慶應OBの杉江俊彦氏である。
ローソンの社長を務めていた新浪剛史氏が2014年にサントリーの社長に“転職”したのも、サントリーの佐治信忠会長と「三田会」で出会い、意気投合したことがきっかけだったといわれている。ちなみに新浪氏がローソンの後任に指名したのも、慶應卒の玉塚元一氏だった(現顧問)。
地銀再編においても、慶應人脈が活かされたケースがある。2015年に経営統合して九州フィナンシャルグループとなった熊本県の肥後銀行と鹿児島県の鹿児島銀行だったが、双方の頭取が慶應商学部の同期(1975年卒)で、「年度三田会」で再会したことがきっかけだったという。