現在の読売巨人軍をみると、山口鉄也や松本哲也を輩出したかつての「育成の巨人」の面影は跡形もない。30億円もかけて補強をしても、たいした効果を得られないばかりか、外に出した選手が活躍する事態が続いている。交流戦の対日本ハム戦で、トレードで放出した2008年ドラ1の大田泰示に大暴れされたのはあまりに象徴的だが、育成を半ば放棄したことでチームの土台はかつてなく弱体化した。
高橋由伸監督は3年契約の2年目だが、ここまで負けが込めば更迭論が囁かれるのも必然だろう。そして、ここ数年、「巨人の次期監督人事」が論じられるたびに浮上するのが、江川卓氏の名前だ。日本テレビ関係者が語る。
「江川氏のスポーツニュースでの解説は、結果論ばかりという批判がある一方、独自の切り口で視聴者から人気がある。もともと、江川氏の後ろ盾は亡くなった氏家齊一郎・日本テレビ元会長です。渡辺氏は江川氏が不動産投資に失敗して負債を抱えたことなどを問題視する一方で、どこかのタイミングで盟友である氏家氏の悲願だった『江川監督』を実現したいという考えもあるとみられてきた。だからこそ、監督人事のタイミングのたびに名前が浮上するのでしょう」
思い返せば、2011年の「清武の乱」の発端となったのも、「江川ヘッドコーチ招聘」だった。これは、清武英利GM(当時)が、渡辺恒雄・読売新聞代表取締役主筆による不当なコーチ人事介入があったと暴露する記者会見をきっかけに、清武氏が解任された事件だ。この時も水面下では様々な思惑が蠢いていたとされる。
「当時、渡辺氏は『江川ヘッドコーチ案』は原監督からの提案だったと説明しています。ただ、原(辰徳)監督の提案の背景には、“借金問題のある江川は巨人の監督に相応しくない”と渡辺氏が常々言っていたことも関係しているのではないか。絶対に監督にはなれない人物をヘッドコーチに据えれば、監督としての自分の地位は安泰と考えたのかもしれない。渡辺氏も江川入閣で人気が回復すると踏んだ。そうした打算だらけで人事が決まっていくことも、清武氏が腹に据えかねて告発に踏み切った背景です」(前出の球団関係者)