──逆にいえば、当時の自民党には総理・総裁に物を言える伝統があった。中曽根(康弘)総理もあなたにさんざん批判された。
小沢:僕は“反主流派”だった(笑い)。
──現在の自民党には、総理に意見できる議員がいない。小選挙区制の導入以降、選挙の公認権を持つ総裁・執行部に逆らえなくなった。
小沢:いや、それは本質的な問題ではない。確かに、地盤を固めきれていない1、2回生議員は執行部の顔色を窺わなければならないだろうが、例えば谷垣禎一君や石破茂君はじめ、党の公認がなくても選挙で当選する力を持っている議員は今の自民党に何人もいる。選挙区の有権者が支持してくれれば何も怖くない。総裁が相手でも自分の筋を通せるはずです。それなのに黙ってしまうから駄目なんだ。
──言う勇気がないのか、言いたいことがないのか。
小沢:両方かもしれないな(苦笑)。
──なおさら政権に厳しく対峙すべき野党も、民進党をはじめ、本気で戦っているようには見えない。
小沢:無気力に見える。野党がやるべきはいい意味の政権批判。僕は、第1次安倍政権のときは年金問題、次の福田内閣はガソリン税問題で攻め立てた。「民の竃」(※注)の話だから必ず国民の共感を得られると信じていたから。それらが響いて安倍さんは退陣した。今でも野党が本当に国民の暮らしを考えて反対すれば共感を得られる。多少荒っぽいことをやってもね。
【※注/都の人家の竈から炊煙が立ち上っていないのを見た仁徳天皇は、3年間租税を免除し、その間は倹約のために宮殿の屋根の茅を葺き替えなかったと伝えられる】