エアバッグの欠陥問題で気息奄々の経営状況に陥っていたタカタが民事再生法申請の最終調整に入ったという報道を受け、6月19日・月曜の東京証券取引所ではタカタの株が大暴落。取り引きが成立しない状態となっている。このまま倒産した場合、債務残高は1兆円を超える可能性があるという報道もある。
「2014年にアメリカでエアバッグ問題の火勢が拡大した時点で、タカタは普通のやりかたではもう助かりようがなかった。自動車メーカー側は何とかいい着地点を模索しようとしたのですが、タカタは終始、保身と時間稼ぎのことしか考えていなかった」
タカタ問題の処理に関わった国内自動車メーカー関係者のひとりは語る。
「タカタといえば、ホンダさんと共同でエアバッグを低コストで量産する技術を確立したことで有名。当然、ホンダさんはタカタについて何らかの支援を行うものと多くの関係者がみていましたが、伊東社長(当時)は早い段階で距離を置くような発言をしていた。
そのときは冷たい対応なんじゃないかと思ったのですが、後で法務を含めた交渉の過程でタカタの態度をみて、ホンダさんが真っ先に見切りをつけたのはタカタの体質に辟易としてのことだったのだろうと思うようになりました」
タカタのエアバッグに関する不良や欠陥の問題が取り沙汰されたのは今から9年前の2008年。折しもメキシコをはじめ、部品メーカーが完成車メーカーの要求によって海外進出を加速させることが求められていた時代で、同時期にはタカタだけでなく、多くの部品メーカーがさまざまな部品について品質問題を起こしていた。
その時点でタカタが開発体制や品質管理にメスをしっかり入れていれば、傷口は浅くてすんだであろう。が、タカタはそれをやろうとせず、小手先の策で乗り切ろうとした。
かつて、タカタと蜜月関係にあったホンダ関係者は語る。
「完成車メーカー側も量産品をテストして長期の使用に耐えうるかどうかを調べますし、納入部品もチェックしていますが、中身が本当にちゃんと作られているかどうかということについて完全に検査することはできない。
そこは相互の信頼関係がモノを言うところなのですが、タカタはその信頼をまったくなくしてしまった。今後、取り引きを続ける企業はどんどん減るでしょう。ウチでも『もうタカタは使うな』という指示が内々に飛んだくらいです」
2014年にアメリカで大々的に欠陥隠蔽疑惑が取り沙汰された時点で半死状態に陥っていたタカタだが、同社の経営を仕切っていた創業家一族の保身ぶりには、メーカー側もあきれ返るばかりだったという。