国家保衛省報道官は今年5月5日、米国の中央情報局(CIA)と韓国国家情報院が主導した「最高首脳部を狙った生物・化学物質による国家テロ計画」を摘発したと発表し、米韓を非難した。
米国防総省はその日のうちに、「そのような現実を知らない」と一蹴した。北朝鮮専門家は「米国で動いている北朝鮮をテロ支援国に再指定する動きに対抗する意図」とみる。今回、紹介した2件の事件は、国家保衛省が発表した事件とは、性格が異なる。事実だとすれば、北朝鮮住民が自分の意思で体制に反旗を翻そうとした点だ。
韓国情報当局者は「事前に発覚し、未遂に終わったとされる以上、計画の有無を確認することは困難」と語る。その上で、次のように強調してみせた。
「北朝鮮では、独裁体制に対する不満が高まっている。われわれの知らないところで、報告にあったようなテロを考える人物が少なからずいるのは、間違いないだろう」
【PROFILE】しろうち・やすのぶ/北朝鮮事情に精通するジャーナリスト。主な著書に『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男』『昭和二十五年 最後の戦死者』『朝鮮半島で迎えた敗戦』など。
※SAPIO2017年7月号