いい歳になっても女性に声かけようとする「ちょいワルジジイ」が話題になったが、ガールハント記事は50年前からの人気企画だった。それは現在のおっさんたちの源流でもある。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が説く。
* * *
男のスケベ心は、いつの時代もパワフルで、いつの時代もケナゲです。古本屋の隅っこで、ちょうど50年前に出た雑誌を見つけました。月刊誌『文藝春秋 漫画讀本』1967年6月号。若いサラリーマン向けの娯楽雑誌です。版元はお堅い文藝春秋ですが、記事も漫画も「お色気」たっぷり。折り込みのヌードピンナップも付いています。
特集は「春から夏へ 男の遊び方とモテ方」。じつにタイムリーで、じつにそそられるテーマではありませんか。温故知新というか原点回帰というか、おっさんとしては自分たちが生まれたころに書かれたハウツー記事から、時代を超える貴重な教えを授かることができるかもしれない。そんな願いを込めて読み込んでみました。
トップ記事は「いまこそハントの好季節」。筆者はテディ片岡。のちに小説家になって『スローなブギにしてくれ』などを書いた片岡義男さんです。いきなり「ガールハントは、春から初夏に限る。つまり五月から六月にかけて、日本の若い女性たちは、精神的にも肉体的にも、もっとも不安定な状況におちいるからだ」と、希望を与えてくれます。
なぜ不安定な状況におちいるのか、スカートの中を吹き抜ける風とパンティの薄さとの関係などを説きつつ、説得力のある文章で解説。そして「ネコのウンコを馬の小便で練ったようなくすんだ色のスカートをはいている女は、(心と体にアンバランスな部分がある証拠なので)絶対にハントできる」と断言しています。具体的にどんな色かよくわかりませんが、街でそれっぽい色のスカートをはいた女性がいたら「なるほど、ああいう女性はハントしやすいわけか」とこっそり納得しましょう。
また、薄着になるこの季節は「肉体をとおした刺激を、女性に対してもっともあたえやすい」「熱烈な新陳代謝へのきっかけを求めてうずいている肌であるから、(中略)刺激を実際の数倍に拡大して受け止めてくれる」と、片岡先生は説きます。肩に手をかけただけでも、それだけで「敵は落ちる」とか。往時と違って今は迂闊な接触のリスクが高くなってはいますが、とりあえず頭の中で何度もシミュレーションを重ねたいところ。