芸能

春ドラマ最終回 「最強の見世物」と化した『小さな巨人』

長谷川博己の演技に高評価

 今クールの春ドラマ、最も強いインパクトを残したのはどの局、どの作品だったか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が総括した。

 * * *
 春ドラマがたて続けに幕を閉じ、「……ロス」と口走ってしまう頃。難役に立ち向かった俳優、強烈なメッセージ性、テーマの是非をめぐってカンカンガクガクと、見所がたくさんありました。最終回とは、いわばドラマのエッセンスが凝縮している回。ということで3つのラストに注目。輝きを放っていたワケをあらためて振り返ってみると……。

●『リバース』 人生の苦さを、正面から噛みしめる姿に浄化される

 湊かなえ原作のドラマ『リバース』は、10年前の親友の死をめぐるドラマ。単なる犯人捜しや謎解きストーリーを超えて、堂々たる「人間ドラマ」として着地しました。親友の広沢(小池徹平)を事故死で失った深瀬(藤原竜也)は、いったいなぜあの時彼が死ななければならなかったのか、問い続ける。一つ一つ、不器用に過去を問い返していくうちに、受け入れ難い罪が顔をのぞかせてきて……。

 人の暗部をえぐり後味が悪く嫌な気分になる「イヤミス」。湊かなえのミステリー作品はそう呼ばれてきました。しかし今回のドラマは、違う。何より、最終回が原作者の手によって新たに書き下ろされた。この斬新なチャレンジ、大いに評価されていいのでは。そして、見ている人の心が浄化されていく深遠な魂の再生ミステリーとなって幕を閉じた。透明感漂う「イイミス」に、昇華していったのです。

 原作小説は「誰が殺したのか」の解き明かしで終わる。しかし、ドラマの最終回は、罪を背負う人間への深い観察が。

 人の人生を変えてしまった行為について、つぐなうことはできるのか。過去を抱えて生きていくとは、どういうことか。とても繊細で難しいテーマですが、市原隼人、三浦貴大、玉森裕太、片平なぎさら役者たちの力演も素晴らしく、人間を掘り下げていく迫力がありました。

 絶望だけではない。「人は常に誰かと何かを交換しながら生きている」というセリフも印象的。希望の光もさした。絶望と希望。人間に対する深い洞察と愛情が静かに強く響きわたった素晴らしいラストでした。

●『あなたのことはそれほど』 予定調和をぶっ壊す破壊的な着地

「ゲスW不倫」のテーマで話題を振りまいた『あなそれ』。不倫を巡って混乱する二組の夫婦。最終回はいったいどう着地するのかと、視聴者の好奇心は揺さぶられ、視聴率は自己最高値14.8%(関東地区)、関西地区では何と17.8%に達しました。

 ドラマのテーマは恋愛・結婚。動物的感性でつっ走るのか、それとも大人の判断で生きるのか。「それほど」でもない人との結婚生活についての「本質的な問いかけ」が潜んでいたからこそ、ここまで注目を浴び話題となったのではないでしょうか?

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン