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中国という巨大な監獄から脱出した盲目の人権活動家の半生

【書評】『不屈──盲目の人権活動家 陳光誠の闘い』/陳光誠著・河野純治訳/白水社/本体2400円+税

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 盲目でありながら、たった一人で、頭の中の地図と感覚だけを頼りに、当局の厳しい監視下にある自宅を脱出するシーンからこのドキュメントは始まる。名手の撮った映画のような迫真の描写に、冒頭からぐいぐいと引き込まれた。

 本書は、障害者、農民、女性らの人権のために当局に対して果敢に法廷闘争を挑み、激しい弾圧を受け、2012年、アメリカに脱出した中国の人権活動家・陳光誠の壮絶な半生を綴った自伝である。ここまで劇的な物語は現代の日本人には考えられない。

 陳は1971年、山東省の小さな貧しい農村に生まれた。幼少期に病気のために失明し、学校教育を受けたのは18歳で盲学校に入ったときが最初。通常の教育を受けなかったおかげで共産党に洗脳されずにすんだ、と書く。

 その盲学校時代、政府のプロパガンダとは裏腹に現場では障害者の権利が保護されず、障害者支援のための資金が公的組織に横取りされていることに気付く。政府に陳情するが効果はなく、問題を解決するには法的手段に訴えるしかないと考え、独学で法律を学び始める。陳は故郷の村の製紙工場による水質汚染問題を手掛け、改善を勝ち取るが、ここから当局による弾圧が始まった。そのとき陳は共産党の非人間性と腐敗を確信し、心に誓うのだ。

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