神戸港で水揚げされたコンテナから日本に上陸したことが5月下旬に確認されて以来、連日のようにメディアで報じられている「ヒアリ」。攻撃的な性格と尻の毒針によって、米国では毎年100人もの命が奪われている。
「刺されて死ぬこと」はもちろん恐ろしいが、そればかりではない。1930年代からヒアリ被害に悩まされる米国では経済的にも深刻な打撃を受けている。
テキサスA&M大学農業経済学部のカーティス・ラード氏らの2006年の調査によれば、ヒアリの定着が確認されている米14州の経済的被害の合計額は54.6億ドル(約6069億円。6月22日現在、以下同)にのぼる。
被害の内訳は「一般家庭」が年間約36.7億ドル(4075億円)、次いで「電気・通信」が6.4億ドル(711億円)となっている。
巣が建物や道の下に作られれば、倒壊や陥没の危険性があるほか、通信ケーブルや電気設備を破壊することが報告されている。
農業への影響ももちろん甚大で、年間4.2億ドル(466億円)の被害があるという。ヒアリは作物を枯らす原因となるである害虫・アブラムシの数を激増させるからだ。神戸港のヒアリ駆除を担当した、環境省外来生物対策室の若松佳紀氏が言う。