◆エアバッグはどう作動する?
シートベルトと併用しないとエアバッグはほとんど効力を発揮できない。事故発生時にシートベルトをしていない人間の運動エネルギーを全部エアバッグで吸収しようとすると、エアバッグを恐ろしく固くなるくらいパンパンに膨らませる必要があり、そんなものにぶつかったら結局は大怪我ないし致命傷を負うことになる。
現代のエアバッグは事故が起きたときに最も大きな被害をもたらす一発目の衝撃をシートベルトと協調して和らげ、内装に体が打ち付けられる被害を軽減するためだけに存在しているのだ。
その作動は一瞬。メーカーやモデルによって微妙な違いがあるが、センサーが衝突から100分の1秒台でエアバッグ作動を判定し、衝突から100分の2秒後にはエアバッグが膨らみ始める。一瞬のように思えるが、時速90kmの場合、減速なしだと100分の1秒で25cmも進んでしまうことを思うと、これでもきわどいタイミングだ。
乗員の激しい体のぶれを受け止めた後、エアバッグは即座にガスを放出してしぼむ。一連の作動が終了するまでの時間は0.1~0.15秒とされている。その後も人間の体は揺れ続け、衝突の方向やシートベルトの装着状況によっては内装やガラスに激しく体が衝突することになるが、もっとも深刻な最初の衝撃を緩和するだけで、生存率は比べ物にならないほど高まる。やはり有難い存在なのだ。
◆エアバッグの形状、膨らみ方にもメーカーのポリシーが出る
衝突検知→展開→収縮というエアバッグの一連の動作は各メーカー共通だが、どうやったら乗員をうまく受け止められるかということについては自動車メーカーとエアバッグメーカーの知見が目いっぱい盛り込まれており、社によって違いが出る。
昔はそれこそバッグを正確に膨らませるだけで精一杯。ボディやシートベルトの構造が弱いクルマの場合、インフレーター(ガス発生装置)の爆圧を目いっぱい上げて対処するというケースもみられた。前述のようにエアバッグをカチンカチンに膨らませると、それによって人間が負傷するが、それでも衝突安全のスコアは良くなるためだ。
現代ではそこまでひどいエアバッグは少なくなったが、それでもメーカー間によって格差はあるという。事故時に効果的に車体を潰して衝撃を吸収する技術が高いメーカーのほうが、エアバッグのほうも設計に余裕を持たせることができるのだ。
エアバッグの展開方法の大きな鍵となるのは、バッグのミシン目。これをどう入れるかで、エアバッグがどういう形で徐々に(一瞬の出来事ではあるが)膨らむかが決まる。乗員が中央からずれるとエアバッグの横を滑って窓枠に頭を打ち付けたりするので、なるべく横に行きにくいような形で開く……といった具合だ。