歳を重ねるほど、どうしても薬を飲む機会も、その種類も増えていく。そうした日常生活に潜むリスクが「飲み合わせ」だ。
飲み合わせにより薬の作用が増強したり減弱することは「相互作用」と呼ばれ、医薬品の「添付文書」に書き示されている。
その一例が、頭痛薬などで処方される「ロキソプロフェン」(代表的な商品として『ロキソニン』がある)と躁うつ病などで処方される躁病薬「炭酸リチウム」の組み合わせだ。薬剤師の堀美智子氏が解説する。
「解熱鎮痛薬として幅広く処方されるロキソプロフェンやイブプロフェンなどは腎臓に負担をかけるため腎機能を低下させることがあります。この影響で腎臓からの排出が抑えられた炭酸リチウムの血中濃度が上がって、中毒症状になる可能性がある。
実際に私の知る患者で、炭酸リチウム服用中に背中や腰の痛みを訴えて市販の痛み止めを服用し、意識がもうろうとして入院された方がいました」
重い病気に処方される薬にも気を配りたい。代表例が抗凝固薬だ。
「心房細動などで脳卒中や心筋梗塞などを起こした、または起こしそうな人が、血栓ができて大事に至ることのないよう用いるのが抗凝固薬です。命に関わる病気のため医師はこの薬の使用を優先し、飲み合わせ相手の薬を変えるよう指示することがあります。こうしたケースで、まだ前にもらった薬が残っているからなどの理由で変更前の薬を自己判断で飲み続けるのは避けるべき」(堀氏)