2017年上半期の流行語が発表された。だがおっさんが今どきの流行り言葉を勇んで使うと恥をかくのは見えている。「おっさんにはおっさんの流行語がある」。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が説く。
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1位は「35億」(ブルゾンちえみwithB)、2位は「忖度(そんたく)」(政治家や官僚のみなさん)、3位は「プレミアムフライデー」(経産省と経団連?)でした。「マイナビ学生の窓口」が大学生男女401人(男性202人、女性199人)を対象に、「2017年上半期に流行った言葉はなんだと思いますか?」と尋ねたアンケートの結果です。
「そうか流行っているのか!」と思って、明日さっそく若者の前で「35億」と言ってやろうと思ったあなた、悪いことを言わないからやめておきましょう。私たちおっさんが無理に若者の流行語を使おうとすることほど、そして微妙に旬を過ぎたギャグを得意気に繰り出すことほど、痛々しくて物悲しくて聞く側の顔を引きつらせるものはありません。
おっさんにはおっさんの戦い方があります。少し前に、カールの悲劇を繰り返さないために「同い年」のお菓子を応援しようと訴えました。「同い年」が存在するのは、お菓子だけではありません。おっさんの血となり肉となっている流行語やギャグもあるはず。中途半端に古い流行語で失笑されるぐらいなら、思いっきり古い流行語を繰り出して、いっそのことあ然とさせてしまいましょう。
「同い年」の流行語は、いわば一生のパートナー。時に慰め合い、時に励まし合いたいもの。1960年代の流行語を順に振り返ってみます。
1960年に流行ったのが、週刊誌のトップ記事を狙うフリーの記者を指す「トップ屋」や、無意味な行動のことをいう「ナンセンス」。週刊誌のスクープ記事が話題になったら、「あそこのトップ屋もやるなあ」と感心しましょう。会社の上層部から理不尽な指示を受けたときは、力強く「ナンセーンス!」と言って拒否したいところ。驚かれそうですけど、あとで「いや、じつはこの言葉と同い年で」と説明すれば納得してくれるはず。
1961年の流行語でぜひ使ってみたいのは、植木等が使った「お呼びでない」。楽しそうに話している若者たちの輪に無理やり加わり、「お呼びでない、お呼びでない? こりゃまた失礼いたしましたー」と言いながら立ち去りましょう。林家三平の「どーもすいません」も使い勝手がよさそうです。上司や取引先に謝るときは、表面的にはさておき、内心ではこうの口調で言っているつもりでいれば辛くはありません。うっかり表面的にもこの口調になってしまったら、たいへんなことになりそうですが。