またしても、DeNAラミレス監督が常識を破る──。3試合連発と上り調子の不動の4番・筒香嘉智を、30日の巨人戦で3番に起用した。四球で歩かされるケースの目立つ筒香の後ろには、打点王のロペスが4番に、首位打者争いを演じている宮崎敏郎が5番に控えることで、投手がより筒香と勝負せざるを得ない状況を作るとともに、たとえ歩かされたとしても得点力アップを狙う目論見だ。
この日の筒香は、ノーヒットながらも7回に四球を選び、4番・ロペスの勝ち越し2ランを呼び込んだ。3番起用のラミレス采配が早くも実を結んだ形になった。野球担当記者が話す。
「日本では4番最強説が有力で、先日日本ハムの中田翔が4番から3番になると、『降格』という表現で報道されました。たとえば、1996年と1998年に開幕から4番を任された巨人の松井秀喜が1か月間不調に陥ると、5月から3番に戻った。その時は『4番失格』という見方をされました」
監督業とは「常識」と「批判」との戦いである。常識に背く采配をすれば「奇策」とネガティブに捉えられ、失敗すれば批判に晒される。だが、そもそも常識は奇策から始まるものだ。たとえば、1点差で負けている9回、2死一塁から盗塁を仕掛けることは、今や当たり前の作戦になっているが、当初は「奇策」と驚きを持って伝えられていた。
1977年4月19日、甲子園球場の阪神対巨人戦。巨人・長嶋茂雄監督は2対3とビハインドの9回表、2死一塁の場面で入団1年目の代走・松本匡史にスチールを命じ、結果は成功。巨人は代打・山本功児のタイムリーで同点に追い付き、延長戦の末に勝利をモノにした。長嶋の「奇策」は以降、「常識」として球界に根付いた。
日本球界では、個々の相性を鑑みずに「左打者には左投手をぶつける」という定説に縛られたり、「9番には投手を置く」という固定観念に捉われたりする采配が目立つ。
だが、就任1年目でDeNAを初のクライマックスシリーズ進出に導いたラミレス監督は徹底的にデータを重視し、1つ1つの起用法に明確な理由を持って臨んでいる。