6月18日に放送された『NHKスペシャル』でも〈睡眠負債が危ない~“ちょっと寝不足”が命を縮める~〉と題してこの問題を大きく取り上げ、話題を呼んでいる。睡眠負債とは、毎日1~2時間の寝不足が借金のように積み重なり、やがて“債務超過”に陥ると、がん、認知症などをはじめとする重大な疾病を発症させる可能性があるのだ。
様々な疾病リスクを生む睡眠負債。週末や予定のない日に「寝だめ」すれば、“借金”を返済できるかというと、そう簡単ではない。脳神経科学などを専門とする枝川義邦・早稲田大学研究戦略センター教授が解説する。
「平日で積み重なった負債を週末で一気に返済しようと無理矢理長く寝ると、生活リズムが乱れてしまい、平日の睡眠の質が落ちるなど弊害が大きくなる恐れもあります。
結局、睡眠負債の返済は『コツコツ計画的に』やるのがよい。とくに中高年は、一気にたまった負債を解消することはできないので、少しずつ睡眠習慣、生活リズムを改善していくしかないのです」
日中に眠気が生じない、自分にとっての適切な睡眠時間を確認した上で、できる限りそれに近い睡眠が確保できるように生活サイクルを設定していくということだ。さらに、東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身(おさみ)院長は、「睡眠の質を上げることにも留意すべき」と指摘する。
「スムーズに眠りにつけるようになれば、布団に入っている時間は同じでも実質的な睡眠時間は長く確保できます。布団に入ってからスマホをいじったりすると、自律神経が興奮した状態になり、眠気を催さなくなってしまう。眠る1時間前から、携帯電話はいじらないようにすべきです」