国内

海洋散骨のリアル 鐘を10回鳴らし黙祷、『イマジン』がBGM

近年注目を集める散骨クルージング

 さまざまな選択肢がある時代、どのように最期を葬られたいかも多岐にわたる。土に還るのが樹木葬だとしたら、海洋散骨は、海に還るというもの。お墓をどうしよう――悩みを抱えた人たちの間で近年注目を集めるクルージング船に、ノンフィクションライターの井上理津子氏が同乗した。井上氏はこれまでに「樹木葬」「室内墓」「永代供養」「女性専用墓」など、多様化する現代のお墓事情をリポートしてきた。今回は「海洋散骨」だ。

 * * *
 現代のお墓事情について紹介する中で、読者からさまざまな感想をいただいた。

 当初は「先祖代々のお墓を継がないのは、勝手すぎる」「どんなにきれいでも、マンションのようなお墓には抵抗感がある」といった声が少なくなかった。しかし、次第に「お墓を選べる時代になったのは、喜ばしいこと」「夫婦墓、個人墓に共感する」といった声が増えてきた。そのような中で、とりわけ強い印象を受けたのが、この3人の意見だ。

「足場の悪い山の共同墓を、ため息をつきながら守っているヨメの立場の私には、新しいお墓はどれも夢の夢です。私自身はいつか海に撒いてほしいとこっそり娘に頼んでいます」(49才・主婦・京都府)

「自動搬送式の室内墓も樹木葬もいいなと思いましたが、私は海に散骨を希望。1か所に閉じこもるより自由度が高く、エコな上に気持ち良さそうだから」(56才・会社員・神奈川県)

「秋川雅史さんが歌って大ヒットした『千の風になって』と同じ思いです。なので、私はお墓には眠りたくない」(65才・主婦・東京都)

「散骨希望」「お墓不要」、そのリアルを紹介したい。

 6月初旬の週末。晴れ渡る空に、白い雲。初夏の日差しのその日、朝潮小型船乗り場(東京都中央区晴海)で、40人乗りのクルーザーに乗り込んだ。株式会社ハウスボートクラブ(東京都江東区)による海洋散骨サービス「ブルーオーシャンセレモニー」の1つ、「合同乗船散骨プラン」に同乗したのだ。

 乗船後すぐに、船長から挨拶があった。

「本日はブルーオーシャンセレモニーをご利用いただき、ありがとうございます。これより出航いたしまして、レインボーブリッジの下から京浜運河に入り、本日の散骨スポットの羽田沖へと向かいます。散骨スポットは、北緯35度33分、東経139度48分。到着は13時50分頃を予定しています…」

 散骨の場所が正確に決まっていることに驚く。エンジンがかかり、クルーザーはゆっくりと桟橋を離れる。

 船内には、5組13人の“乗客”がいた。中年や年配の夫婦、おそらく40代の男性2人組、「おじいちゃんと20才くらいの孫娘」と見受ける2人を含んだ一家ら。喪服の人はおらず、みな、カジュアルな服装である。

関連キーワード

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン