5年に1度の党大会をこの秋に控え、習近平政権が、俄に動き出した。新たな先進都市「雄安新区」を河北省に構想し、首都圏機能の一部移転を仄めかしている。さっそくプロジェクト現場を歩くと、何やらきな臭い空気が漂っていた。ノンフィクション作家、安田峰俊氏がレポートする。
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「今年の2月23日、いきなり村道がすべて封鎖され、村人たちに家から一歩も出るなと命令が来た。習主席が村の近所に来て『ここを雄安新区の中心にする』とおっしゃったらしい。ただ、みんな屋内にいて、主席の姿は誰も見ていない」
安新県の中心部から8km離れた大王鎮小王営村で、雑貨店の店番の若い男性はそう述べる。赤土の上に廃品が積まれた空き地だらけの寒村は、この日を境に運命を大きく変えた。
4月13日、新華社は雄安新区の当面の範囲を、村を中心とした100平方kmにすると正式に発表。新区は最終的に東京都の面積にほぼ匹敵する2000平方kmまで拡充が予定され、近隣の他県も含まれる見込みである。
諸報道によれば、当局による農地の接収価格は1平方mあたりわずか90元(約1500円)ほどという。代替の住宅は提供されるものの、住み慣れた村を二束三文の補償金で突然追い出される村人らには困惑も広がる。