東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利氏(運動科学研究室長)は、2000年から群馬・中之条町に住む65歳以上の住民5000人を対象にした大規模追跡調査を行ない、身体活動と病気リスクなどの関係を調べる「中之条研究」を続けてきた。
「1997年に留学先のカナダから帰国した際、日本では筋トレがブームになっていましたが、実際にどの程度の運動をすれば病気を予防できるかという客観的な指標がほとんどなかった。そこで大規模な疫学調査を自力で始めようと考えました」(青柳氏)
試験的に始まった中之条研究はスタートから17年が過ぎ、世界中の研究者から注目を集めている。
同研究では対象者に、運動や身体活動の状況、食生活、睡眠時間、病気の有無などを聞く詳細なアンケート調査を年に1回行なって、健康状態を綿密に調べる。
中之条研究で蓄積された膨大なデータから明らかになったのは、「歩くことは健康に良い」とするこれまでの“常識”が崩れたことだ。
「歩く“量”だけでなく“質”にも注意を払うべき」ということであり、「歩数が多いほどいい、運動は激しいほどいい、という考えは誤り」だという新常識である。