どうしたら多くの高齢者の夢、「在宅ひとり死」は叶えられるのか──社会学者・上野千鶴子さんが在宅医療の医師・小笠原文雄さんに67の質問をぶつけてベストセラーとなった『上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?』から4年。ますます在宅医療の必要性が増し、注目度も高まっている。上野さんは小笠原さんの新著『なんとめでたいご臨終』をどう読んだのか。人生の最期を家で朗らかに過ごす方法上野さんと小笠原さんが語り合った。
上野:おひとりさまでも、お金持ちじゃなくても、わが家で最期を迎えられる時代になりましたね。
小笠原:そうなんですよ。
上野:先生と私は8年前に鹿児島の学会でお会いして、その後、岐阜の小笠原内科の訪問診療に同行したり、共著という形で一緒に本を書いたりしてきましたが、今度のこの『なんとめでたいご臨終』、とてもいい本に仕上がりましたねぇ。小笠原節が炸裂しています、先生の肉声が聞こえるようです。
小笠原:うれしいなぁ。ありがとうございます。
上野:何がいいって、今、看取りに関する医者の本って、ものすごく数が多いでしょう。
小笠原:多いですね。
上野:私、いっぱい読んでいるんですけど、医者の書いた本というのは、まず自慢話が多い。2つ目に、他の人には真似できない固有の体験が多くて、一般化できない。3つ目は、理念とか哲学が語られているけど、そういったものは「どうか内輪でやってください」と(笑い)。患者が知りたいのは、この医者が私に何をやってくれるかっていうことなんですよ。
小笠原:確かに、そこがいちばん切実に知りたいところでしょうね。
上野:で、この本には、そういうことがきちんと書かれている。類型別になっているので、ああ、そうか、こういう時はこうするんだ、ああするんだと、ノウハウ本として読める。事例を通して、とても腑に落ちる理解ができます。
小笠原:患者さんの年齢や家族構成、病気の名前や症状、余命など、データを先に把握してもらってから、亡くなるまでの経過を読んでもらう構成にしました。あと、『お別れパンフ』といって「患者さんにこういう症状が出たら、最期の時が近づいていますよ」ということを書いた、小笠原内科で実際に使っているパンフレットも掲載しています。
上野:そう、実用的なんです。と同時に、小笠原さんらしさもあって。類書が多い分野ですが、他の本とはまるで違う、ちょっと類のない本になったと思います。それと、私はやっぱりお金の話がちゃんと書かれている点が、うれしかった。よく聞かれるんですよ。「在宅で死にたいけど、高くつくんでしょう?」とか「お金のある人にしかできないんでしょう?」って。
◆在宅医療費はそれほど高くない
小笠原:費用のことですね。