2017年上半期ベストセラーランキングの総合第1位(日販・トーハン・大阪屋栗田の3冠達成)となり、部数も90万部を突破した佐藤愛子さんの『九十歳。何がめでたい』。各界の著名人からも大絶賛が相次ぐが、著書『バカの壁』がなんと400万部を超える大ベストセラーとなった解剖学者の養老孟司さんは本書をどう読んだのか。歯に衣着せぬ激烈インタビューをお届けする。
◆理屈ではなく感情的に「もっとも」
──『九十歳。何がめでたい』を読んで、どう思いましたか。
「いや、面白かったですよ。読んでいる間中、ずっと笑っていました。最近は、うっかり本音を言うと、ネットで袋叩きに遭うからね。その点、本は自分でお金を出して買うのが普通だから、炎上しにくい。この本に出てくる1編『いちいちうるせえ』の中のゲームバキバキ事件に対する佐藤さんの感想も、ネットだったらきっと炎上していたと思うよ」
──現在、90万部を突破しました。なぜこんなに売れているんでしょう?
「2つ大事なことがあります。1つは、この本が明るいこと。暗い本はダメ。暗く書くと大変なことになる話を、明るく書くからいいんですよ。もう1つは、理屈ではなく、感情的に『もっともだ』という気にさせてくれること。佐藤さんは決してお説教はしない。説教をしないでわからせるのが上手ですね」
──印象深いエピソードはありますか?
「例えばこんなくだり。佐藤さんがテレビの不調でなじみの電気屋に連絡すると、頼んでもないのに出張修理の人が駆けつけてきて、リモコンをチョコチョコして直しただけで4500円も取られたというエピソードです。
これ、ぼくにも似たような経験があります。ぼくの家には、某通信会社と契約しているWi-Fiがあるんですが、ある日、その会社が『総務省のお達しにより、より安全なWi-Fiに取り替えます』と言ってきたんですよ。しかも、それが月々3000円かかるという。そこでぼくが『これまでは何が危険で、今後はどう安全になるんですか?』と聞くと、担当者は答えられない。
3000円も出せば、掛け捨ての生命保険料を出せますよね。だから、『訳もわからず保険料を取られるんだね』と言ってやりましたよ。頼んでもないのに勝手に来て、安全だからと機器を売りつけようとする。これは完全な“マッチポンプ”ですよ。要するに、今は世の中の方がメチャメチャなんだ」