「オリンピックシーズンですから、基礎からクラッシックをやってきているロシア勢に対抗するためには、東洋人的なものを出したほうがいい」
フィギュアスケートの濱田美栄コーチは、指導する本田真凜選手(15、関大高)の今シーズンのプログラムについて、こう意図を説明した。平昌五輪に挑む今年、濱田チームのキーワードのひとつは<東洋の美>だ。
新プログラムが発表されたのは去る7月2日、関大アイスアリーナ(大阪府高槻市)で開かれたアイスショーの後だった。左股関節の疲労骨折のため今年3月の世界選手権を欠場、約半年ぶりに公に姿を見せた全日本3連覇中のエース・宮原知子選手(19、関大)、今期からシニアに参戦する本田選手らが取材陣に答えた。
宮原のフリープログラムは「蝶々夫人」。日本では浅田真央さん、安藤美姫さんらが滑ったフィギュアの王道曲だ。ショートプログラムはまだ出来ておらず、3日からカナダに渡って作るという。一方、本田のフリーは「トゥーランドット」。2006年トリノ五輪で荒川静香さんがフリーで使用、金メダルを獲得したことで、一躍、日本中に知られるところとなった、こちらも言わずとしれた名曲。ショートは「3年くらい前から滑りたかった」というタンゴ(「ジェラシー」と「ラ・クンパルシータ」)を自ら選曲した。
「トゥーランドット」と「蝶々夫人」はともにジャコモ・プッチーニ作曲のオペラで、「トゥーランドット」の舞台は北京、冷酷なトゥーランドット姫の心を王子が溶かし、二人が結ばれるまでの物語。一方、「蝶々夫人」は、長崎を舞台に、アメリカ海軍士官ピンカートンと蝶々さんの悲恋を描く。
オリンピックを目指す宮原と本田がいずれも<東洋の美>を魅せる──。冒頭の濱田コーチの言葉通り、これは一つの“対抗策”でもあるのだ。フィギュアスケートに詳しいスポーツライターはこう語る。