映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、津川雅彦がテレビ時代劇「必殺」シリーズで共演した故・緒形拳について語った言葉を紹介する。
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津川雅彦は1970年代、テレビ時代劇「必殺」シリーズに悪役として連続出演している。そのうちの二作は、緒形拳が主演している作品だった。
「『必殺』を撮っていた松竹の京都撮影所の近くに『つたや』という飯屋があって。そこの『こたつ部屋』という個室にみんな集まって検討会をやってたんだよ。緒形とは初めてそこで話をして、『こいつ顔は悪いけど頭はいい奴なんだな』と気に入った。
親しくなってからは、ガタと呼ぶようになったんだが、そのガタが『うちに来てくれ』って言うから何かと思ったら『親友になってくれ』ってさ。男同士で初めて愛を告白された。
ガタは『俺、友達がお前しかいねえんだ。これからも多分そうだからさ』って言ってくれたんだな。嬉しいから『じゃあ、なるけどさ、俺には親友はガタ一人じゃないよ。友達がいっぱいいるからな』って付け加えた。ガタは『お前は好きにしてくれたらいい。俺にとっての親友はお前だけだ』ってね。その後もガタはシャイな男だから、朝会ってもろくに挨拶もしないし、お世辞も云わない。お互いに悪口の言い放題だったなあ」
1985年のNHKドラマ『破獄』では、緒形が脱獄囚役、津川が看守役として共演している。