2010年に国内での臓器移植数を増やすための改正臓器移植法が全面施行されたが、深刻なドナー不足からは脱していない。
年間の臓器提供者(ドナー)は100人程度にとどまり、圧倒的なドナー不足のため国内における移植手術の待機期間は数年から十数年と長期にわたる。これでは待機中にリスクが増す一方である。
そこで選択肢に挙がるのが米国に渡航しての移植手術だが、その額は近年、高騰している。2007年頃まで米国の移植手術はすべての臓器で3000万~7000万円ほどだったが、国際移植学会などが海外渡航による移植自粛を求めた2008年の「イスタンブール宣言」以降、デポジットが急激に値上がりしたのだ。この値段に患者側からの交渉の余地はない。
最近は心臓手術だと、デポジット2億~3億円、プラス渡航・滞在費5000万円ほどが相場とされる。
イスタンブール宣言により、欧州を中心に多くの国が外国人への臓器移植を禁じる措置を取った。だがその分、「闇ビジネスが広がった」と言うのはフィリピン在住の現地ジャーナリストだ。
「いまも貧困層の子供の誘拐や失踪があると“臓器売買の対象ではないか”と怖れられる。闇では腎臓だと400万~600万円が相場と言われてます」
フィリピンでは、2010年に外国籍患者への生体ドナーからの臓器提供を禁止する法律が施行され、臓器ビジネスは下火になったとされる。
さらに2014年には、違法な移植を巡る臓器売買、あっせんに関与した者は、20年以下の禁固刑と罰金200万ペソ(約445万円)を科す法案が下院に提出されたが、この法案が提出されること自体、闇での臓器移植がいまだに存在していることを示している。また、南アジアの貧しい国々はいまも闇の移植ツーリズムが盛んだという。
「最近のブローカーはSNSで臓器移植の支援団体を装ってドナーを集める。医療費から渡航費用まで全部ひっくるめて5万ドル(約550万円)~12万ドル(約1300万円)ほどが相場で、移植手術を受けるのはサウジアラビア、バーレーン、イスラエルなど中東の国の富裕層が多い」(アジアの移植事情に詳しい日本人ジャーナリスト)