「愛してる」。小林麻央さんは夫の市川海老蔵さん(39才)にそう告げて、息を引き取った。2人の幼い子供を残し、34才の若さで逝く無念さは想像にあまりあるが、最期にこんな言葉を残して旅立つ姿に心を打たれた人も多かったのではないか。
麻央さんが最期の場所に選んだのは、海老蔵さんや子供たちの待つ我が家だった。5月26日、麻央さんはがんが顎にも転移していることを明かし、その3日後、退院して在宅医療に切り替えた。彼女のブログには、我が家に帰ってこられた喜びが綴られている。
〈一ヶ月ぶりの我が家の香り。人参ジュースでお祝いです。これからは在宅医療に切り替え、自宅で点滴など続けながら、在宅医療の先生、看護師さん そして何より家族に支えてもらいながら生活していきます。
退院前は、これから家族へかけてしまう負担が怖く、退院が近づくたび不安でしたが、やはり我が家は 最高の場所です〉(5月29日)
それからおよそ1か月間、亡くなる6月22日までを自宅で過ごした。決して長くはないその時間は、麻央さんにとって、どんなものだったのだろう。日本在宅ホスピス協会会長で、長年在宅医療に取り組んできた『なんとめでたいご臨終』の著者、小笠原文雄医師はこう話す。
「家族と同じ空気を吸って生活するだけで心は癒やされます。ベッドで寝ているだけでも、病院と家では意味が違う。麻央さんがいちばん気にかけていたのは、おそらくお子さんのことだと思いますが、たとえば幼稚園に送り出し、無事に帰ってくるのを待っているだけでも、その時間に意味が生まれるのです」(以下、「」内すべて小笠原さん)
◆「愛してる」という言葉が物語るもの
ブログには、子供と一緒に絵本を読んで楽しんでいる様子や、家に帰ってきたことによる喜びや安心感などにより、食事の種類や量が増えたと報告する半面、刻々と変化する病状の中で、家族にも負担がかかる在宅医療の大変さについても綴られていた。
足の痛みを和らげるため、姉の麻耶さんが毎日懸命にマッサージをしたり、母親が点滴の処置をしたり…。添えられた写真からは、目の周りにはクマができるほどやつれ、痩せていったことも伝わってくる。