──国(厚労省)は飲食店など屋内喫煙規制案の方針について、「完全な分煙はあり得ないから、全面禁煙にする」と言っている。
玉巻:WHO(世界保健機関)もそういうスタンスで、それが規制推進派である厚労省の「金科玉条」にもなっています。
ところが、分煙は不可能だから全面禁煙というなら、なぜ「喫煙室」は認めるのでしょうか。屋内にある喫煙室はそこでサービスを提供していないというだけで、禁煙部分と喫煙部分を「分煙」していることに違いはありません。
あの“禁煙原理主義”ともいうべきアメリカでさえ、ホテルの客室ではフロア毎に喫煙を認めているところもあります。
結局、プライベート空間には関心を持たず、パブリックな部分は全面禁煙と明確な区切りを設けようとすると、ひとつの建物の中でパブリック部分は禁煙、プライベート部分は喫煙も可という形で「分煙」を行なうことになっている。WHO自身もそうしたロジックの破綻にあえて口をつぐんでいるのではないでしょうか。
──国が実施した業界団体へのヒアリングでは、緩和ケアなど終末期医療を受ける患者の施設内(あるいは個室)喫煙も認めないのかという質問も出た。
玉巻:神奈川県の条例見直し検討においても同様の問題提起がありました。
病院であればすべて全面禁煙で敷地内も禁煙となると、ホスピスに入って身動きも取れないような患者さんは車いすに乗せられ、点滴をつけたまま敷地外まで喫煙しに行かなければなりません。
終末医療を行なう病院の病室や老人福祉施設の個室などと同様に、病室ではなく一種のプライベート空間と捉え、施設管理者の裁量に任せて一部喫煙を許可してもいいのではないかという意見があるのも事実です。ところが、病気になってもたばこを止めないこと、そのことが間違った不合理な行動であって、配慮不要だと批判する意見もありました。
──例外なしにガチガチに規制を設けると、あちこちで混乱することになる。
玉巻:受動喫煙問題の法規制は、健康被害が明らかに検証されている場合と、たばこの煙が不快だから禁煙にすべし、という情緒的な議論をはっきり分けて議論する必要があります。
そこを分けずに、あるいは意図的に混同させて、受動喫煙防止を錦の御旗に「たばこ憎し」で規制しようとすると反発が大きく、喫煙者の理解も得られないでしょう。