国民が陛下の健康と長寿を願うなか、「象徴」である天皇は常に特別の医療体制が組まれてきた。皇室ジャーナリストの神田秀一氏が“玉体”の医療の歴史と現状に迫る。
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現在の侍医はスーツにネクタイ姿で拝診します。侍医の数は昭和天皇と同じ、侍医長を含む5名です。記者会見に登場する「皇室医務主管」は、皇室の医療の統括者で公の場で発言するオモテの顔です。医務主管の下にウラで実務を受け持つ侍医長、侍医がいます。
現在では「おぬる(体温)」や「お東(便)」はなくなりました。毎朝、侍医は天皇陛下に「伺候(参上)」して、顔色、眼、喉などを拝診、問診します。
食事をどの程度召し上がったかも侍医が確認し、残されていたら分量を計ります。食事を作る「大膳課」に献立を確認し、栄養価に関する指示を出すこともあります。昭和天皇のときは事前に同じ食事を食べて味を確認する「おしつけ(毒味)」がありましたが、いまはありません。日々の拝診以外にも、両陛下は皇太子同妃両殿下時代から年に一度、宮内庁病院で人間ドックにあたる定期検査を受けています。
かつては陛下が通う病院といえば宮内庁病院でした。皇居内ならば、皇宮警察本部があるため警備上の問題もなく、陛下のカルテという機密の流出を防げるという考えもあったようです。
2001年に東大病院に「特別室」ができると、両陛下は入院のときは東大病院を利用するようになりました。侍医も宮内庁病院の医師もほとんどが東大出身なので、東大病院とは連携が取りやすいのでしょう。