どうやったって「ヤンキー主婦」に見えない美人を、強引に野暮にするって……似たようなドラマありませんでしたっけ。そう、桐谷美玲が冴えないリケ女をやった前クールのドラマ『人は見た目が100パーセント』に重なるパターン? 制作も同じフジテレビというのが不吉な予感。同じ轍を踏むことにならなければいいけれど。
となるとむしろ、「ドラマ」ではないのに人々の関心を一身に集める、あの動画が気になる。あっちの方がドラマツルギーに満ちている、そんな皮肉な現実を認めないわけにはいきません。
松居一代さんの情報発信は、たしかにやり過ぎが目立ち名誉毀損等にあたる可能性も指摘されていますが、敢えて、ドラマの三要素──「脚本」「役者」「演出」という視点から検証してみると。
「脚本」──自殺未遂話に夫のパスポート渡航歴、バイアグラ、愛人?の手紙……次から次へと想定を超え予測不可能な展開。
「役者」──まさしく松居さんの存在感。恨みのこもった白眼、怖すぎる表情、一転して不敵な笑みと、演技力を発揮。
「演出」──スッピンをさらしたり、破れた靴下を見せたり、89歳の共演者と登場したり……。
「脚本」「役者」「演出」のいずれも、人々の関心と視線を一手に引き寄せる要素を揃えていて、まるで「ドキュメンタリーサスペンスドラマ」か「ノンフィクションミステリー」。テレビドラマがこれに対抗して関心を集め、超えていくには相当の力量が求められるでしょう。
今やSNSなどで個人が思わぬ「ドラマ」を自由自在に発信できるた時代。だからこそ、テレビ局の制作陣には確固たるドラマ手法や作品作りの哲学が、以前にも増して求められているのかもしれません。