訪日外国人が増え続けている。しかし、日本の旅行代理店は業績が低迷中の傾向がある。経営コンサルタントの大前研一氏が、インバウンド需要を業績向上につなげられない日本の旅行業界の弱点について解説する。
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今年1~5月の訪日外国人客数は1140万人を突破し、単純計算だと年間2700万人以上に達する勢いだ。3000万人の大台も見えてきた一方で、国内の旅行代理店は軒並み業績が低迷している。
最大手のJTBは2017年3月期決算が減収減益で、純利益がこの5年で最低だった。近畿日本ツーリストやクラブツーリズムなどの持ち株会社KNT-CTホールディングスは2017年3月期決算が最終赤字に転落し、HISも2016年10月期決算の純利益がほぼゼロで上場以来最低となった。てるみくらぶ倒産のニュースも記憶に新しい。
訪日外国人客数が過去最高を更新し続けているのに、なぜ旅行代理店は苦戦しているのか? 長年、日本人の海外旅行(アウトバウンド)と国内旅行をメインにしてきたため、外国人の訪日旅行(インバウンド)を取り込めていないからだ。
インバウンド客をつかまえるためには、それぞれの国でマーケティングを行ない、それぞれの国の訪日旅行ニーズに対応した商品を作り、それぞれの国の言語で広告・宣伝、販売活動を展開しなければならない。さらに、来日したお客さんを送迎・案内するランドオペレーション(ランオペ)を行なわなければならない。
だが、そうしたオリジネーションについては、今のところ大手はほとんど手つかずの状態である。