早稲田実業の清宮幸太郎にとって、この夏の第一打席、その5球目──。相手エース右腕の甘く入った直球を強振すると、滞空時間の長い当たりが右翼席のポール際に飛び込んだ。
「芯をこすった当たりでしたが、フェアゾーンに運ぶことができました。(昨夏の西東京大会準々決勝で敗れた)八王子戦の最終打席は同じような角度で、ライトフライ。飛距離は確実に伸びてきている。1年やってきたトレーニングの成果が出ていると思います」
4回戦では満塁本塁打を放ち、高校通算本塁打が105本に達した“怪物”が甲子園帰還を果たせるかに大きな関心が集まっている。
早実は昨秋と今春の東京大会王者だ。東西に分かれて争われる夏は、当然ながら西東京大会の本命となる。
「どこよりも長い、早実の夏にしたい」(清宮)
対抗馬は、秋と春にいずれも決勝で早実に敗れた日大三。エース左腕の櫻井周斗は、直球と同じ腕の振りから投じられ、打者の手元で鋭く曲がるスライダーが宝刀だ。秋は敗れたとはいえ、清宮から5三振を奪い、一躍、スカウトが注目する存在となった。さらには、清宮以上の体格を誇る日大三の“デカプリオ”こと金成麗生(かなりれお)という193センチの左の大砲もいる(金成は投げても最速148キロ)。
実力が伯仲する両校のライバル物語。両監督の采配の妙も面白い。