国内に患者が1010万人いる高血圧の場合、60代の29.9%、70歳以上になると53.0%もの人が降圧剤を服用している。身近な薬ではあるが、適切に服用しないと寿命を縮めかねない。
降圧剤には「ACE阻害薬」や「ARB」などがあり、ともに高齢者が飲み続けることの多い薬だが、落とし穴もある。北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師の話。
「降圧剤が効きすぎると患者によって血圧が過剰に低下して、腎臓の血流が下がりすぎて腎障害を起こすリスクがあるといわれています」
今年3月に英医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』(BMJ)に掲載された論文がある。1997年から2014年までの間、30万3451人を対象に、ACE阻害薬またはARBのどちらかの降圧剤を投与することで腎臓の機能がどう変化するかを調べたものだ。
2か月後、98.3%(30万1373人)には腎機能の低下はほとんどみられなかったが、1.7%(2078人)には重度の腎機能の低下が生じた。そのうえ、腎機能が低下したグループは、低下していないグループに比べて1.84倍も死亡率が高かった。
「この研究では、腎機能が低下したグループは1年間で7%が死亡したのに対し、低下しなかったグループは2%と差が出ました。
このように、降圧剤との相性が悪ければ急激に腎機能が低下することがある。死亡した患者は、その薬をやめて別の薬に切り替えれば、1年以上生存期間を伸ばせた可能性があります」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)