この国には、内部告発者を保護する法律(2006年4月に施行された公益通報者保護法)ができてなお、個人が大組織を相手にすることには、多くの困難が伴う。そのことを示す実例が、現役社員の立場で2度にわたって会社を訴えた経験を持つオリンパス社員・濱田正晴氏(56)だ。
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私が社内のコンプライアンス担当部署に、上司が取引先から不正に社員を引き抜こうとしていると通報したのは2007年6月のことです。公益通報者保護法が施行された翌年にあたります。
私が通報したことは誰にも漏らさないようにと伝えていたのに、担当部署から翌月に届いた回答メールの宛先にはCC(同報)で、引き抜きをしていた上司本人が入っていたのです。
【2007年当時、超音波非破壊検査装置の営業のチームリーダーを務めていた濱田氏。内部通報が対象の上司らの知るところとなった結果、全く経験のない部署に何度も異動させられるなどの処遇を受ける。
2008年2月、配転命令の無効と損害賠償を求める訴訟を起こし、2012年6月に最高裁で「配転は人事権の乱用」として220万円の賠償を命じる判決が確定した】
内部通報をしたのは会社の信用を守りたいという気持ちだけだったのに、裁判になって多くの時間も費用もかかってしまった。公益通報者保護法ができても、罰則がないから組織は通報者を守ろうとしないのです。