国内

娘が厳選した老人ホームとサ高住 認知症の母が選んだのは?

認知症の母のための施設を厳選したが…

 父の急死で突然、実母を支える立場になり戸惑う本誌・女性セブンのN記者(53才)が、認知症を告知され、変わりゆく母との生活を綴る。

 * * *
「あたしはね、Nちゃんの家族のお客さんにはなりたくないの。家に帰るわ!」

 父の急死によって、母は葬儀の前後1か月ほど、わが家に滞在した。自宅に帰ることになった際、突然、キレ気味に、こう言い放って出て行ったことがあった。

「狭くて居心地が悪かった? ご飯が口に合わなかった? 葬儀から何から、すべて私にやらせておいて、いったいなんなの、その言いぐさは!?」

 最後の言葉はさすがにのみ込んだが、私は無性に腹が立った。

「“お客さん”ってどういう意味よ?」

 母の本心はわからないまま、「ふん!」と、最悪な気分、不機嫌な顔で見送った。

 それから約1年。激やせし、認知症ならではの騒動をいくつも起こした末に、ついに腹をくくって始めた母の住まい探し。何軒もの老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を、「母が安心して静かな老後を過ごせるように」との願いを込めて、いくつも見に行った。

 ところが肝心の母といえば、「ママはどんなところがいい?」と聞いても、「そうね~、どうでもいいわよ」と、まるで興味もやる気もなし。「えっ、あたし引っ越すの?」と、ボケたふりでかわすことすらあった。

 やはり老人ホームなどは嫌なのだろうか。ダメなら同居も視野に入れてはいたけれど、うまくいかなければ家族全員が不幸になる。母にとって、今度の引っ越しはたぶん最後だ。失敗は許されない。それなのに母の心は、依然として闇の向こう側にあった。

 そんな私にヒントをくれたのは当時、母のケアマネジャーだったMさん。4人の子育て経験もあるベテランで、母の“もの盗られ妄想”が起こったときも、すぐに母の元へ飛んで行って一緒に財布を捜してくれた頼もしい人だ。

「お母さんね、デイサービスではいつも積極的にみんなに話しかけて、一生懸命楽しもうとしているのよ。偉いわね」

 えっ、母が話しかけてる? 楽しもうとしている? もしかしたら母は、“お客さん”として娘の家にいるより、ひとりでも“自分の生活”を楽しみたかったのか…。

◆母が選んだのは人の営みが息づく“町”だった

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン