いま、「忖度」がキーワードになっている。もともと他人の心を推し量るのは悪いことではないはずだが、現代ニッポンでは、「忖度バカ」とも言えるような人たちが増えている。そんな奇妙な空気を一掃するにはどうすればいいのか。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が指摘する。
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森友、加計と続いている安倍晋三首相がらみの“お友だち優遇疑惑”で、ぼくの心に当初から引っかかっている報道がひとつある。それは、和泉洋人首相補佐官が「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」と前置きして、前川喜平前文部科学事務次官を水面下で説得しようとした、という報道だ。加計学園問題で、前川さんが総てのキーパーソンと名指しした和泉首相補佐官は、この言葉で文字通り、言えないけれど「忖度のリレー」を迫ったのではなかろうか。
そもそも「忖度」は、決して悪いことではないし、相手の心中を推し量ってそれに応えることは、サービス業や営業職などでは必要不可欠な配慮である。同時に古くからの日本的な美徳でもあった。けれど、それが利権や利益誘導の場で働き出すと、一気におかしなことになってくる。国有地が8億円も安くなったり、国政に係わる霞ヶ関の優秀な官僚たちがなぜか大事な資料を大量になくしてしまったり、ついでに記憶もなくしてしまったりする。
一方で就任以来、場をわきまえないファッションや自衛隊を前面に押し出した選挙応援演説などで批判が絶えない稲田朋美氏は、菅義偉内閣官房長官などと並んで安倍首相の“お友だち”のひとりとされている。
ぼくの個人的印象では、稲田氏もまた安倍首相の考えを忖度して、その寵愛を失わないよう遮二無二がんばっているようにうつる。彼女が見ているのは安倍さんだけで他は見ていないから、次々に問題を起こす。それでも「任務を全うする」をひたすら繰り返してきた彼女は、日本政界のトップが私を守ってくれるという万能感があったのかもしれない。しかし、リゾートファッションやハイヒールで自衛隊の現場に現れる人が防衛大臣にふさわしい人物だったか否かは論を俟たないだろう。
“一強”と言われる安倍首相のお友だちグループ内にいると、安倍さんの顔色しか見えなくなって、他が支離滅裂でも一強のご威光(それとも、ご意向?)で押し切れる気になるのかもしれない。