近年、がん患者の間で“最後の切り札”として注目を集めている「粒子線治療」。一部のケースを除き公的医療保険が適用されず、総額約300万円もの費用は自己負担となるが、それでも治療を望む患者は後を絶たない。どのような治療法なのか。フリーライターの清水典之氏が解説する。
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がんの治療には大きく分けて「手術」「抗がん剤」「放射線」治療の3つがある。ここで紹介する重粒子線治療や後述する陽子線治療は放射線治療の一種で、「粒子線治療」と呼ばれる。
X線やガンマ線などを用いる一般的な放射線治療に対し、重粒子線治療は炭素イオンを巨大な加速器で光速の70%(秒速約21万km)にまで加速し、そのビームをがん細胞にぶつけて破壊するのが特徴だ。
従来の放射線治療では、がん病巣周辺の正常な細胞にも放射線が照射され障害を受けるリスクがあった。だが、重粒子線治療では加速したビームががん細胞にぶつかったところで最大エネルギーを放出し止まるので、がん病巣をピンポイントで攻撃できる。しかも、がん細胞の破壊力は従来の放射線の約3倍に達する。