内部告発の成否のカギを握るのが、告発者の声を国民に届ける「メディア」だ。2002年に起きた雪印食品による牛肉偽装事件は、同社の取引先だった西宮冷蔵の水谷洋一社長(63)の告発によって明るみに出た。
大企業の不正に立ち向かう水谷氏は一気に“メディアの寵児”となったが、その後の平坦ではない歩みから、考えさせられる点は多い。
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朝日新聞と毎日新聞に情報提供して朝刊1面トップ(2002年1月23日付)で問題が報じられてからは、記者たちが僕のところに殺到してきて、寝る間もなかった。
【2001年に日本産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)感染が発覚し、農水省は国産牛肉買い取り事業を開始。同事業を悪用し、外国産牛肉を国内産と偽ってパッケージを詰め替えて買い取らせようとしたのが雪印食品関西ミートセンターだった。水谷氏の告発によって、雪印食品は2002年4月に解散に追い込まれた】
相手は大口の得意先のひとつやったから、一度は内々に不正をやめるように忠告しましたよ。でも、無視されて、「ほな(告発を)やってやろう」と思ったんですわ。
僕からすればマスコミは事件の“観客”でしかなった。告発直後は各社が連日押しかけてきたけど、徐々に1社ずつ撤収していく。雪印食品の解散だとか、そういうタイミングになるとまた何社もやってくる。そういう波の繰り返しでした。