すでに全国各地で35℃を超える猛暑日が観測されている。今年は過去最大級の「猛暑」となることが確実だ。
最も気になるのは熱中症のリスクだ。総務省消防庁の発表では、6月だけでも全国で3481人が救急搬送されている。特に高齢者には危険が伴う。2015年の熱中症による死亡者968人のうち、8割超の781人が65歳以上である。
熱中症予防をはじめ夏の健康対策は急務だが、実は良かれと思ってやっている猛暑対策が、裏目に出ることも少なくない。たとえば、水の飲み方ひとつをとってもそうだ。
この時期は「水を飲んで熱中症を防ぎましょう」というアナウンスをよく耳にする。野球場やイベント会場でも「十分な水分補給を」という呼びかけは必ず聞かれるし、消防庁や厚労省などからなる「熱中症関係省庁連絡会議」は、「のどの渇きを感じる前の水分補給」をポスターなどで盛んに勧めている。
しかし、その補給法を間違えてしまうと命取りだ。中でも一番危険なのが「水だけをがぶ飲みすること」だという。『いまさら聞けない健康の常識・非常識』(主婦の友社刊)の著者で、池谷医院院長の池谷敏郎医師が、その危険性を解説する。
「水の吸収には限界があるので、一度に大量摂取すると吸収できない。また、大量の発汗の際に、水分とともにナトリウムなどのミネラルも減少します。この時、水分だけを補給しようとしても、血液中のナトリウム濃度が低くなっているために喉の渇きが感じられず、必要な水分を飲むことができなくなります。
結果、脱水が進み、頭痛や痙攣、意識障害などが見られるとともに、脳梗塞などの血栓症を発症する危険性が高まります」