稲田朋美・防衛相を失言大臣の象徴として内閣改造で交代させ、一連の不祥事の連鎖のピリオドを印象付ける──そんな安倍晋三・首相の算段は、改造まであと1週間のところで潰えた。結果的に稲田氏は辞意を表明した。
もちろん、国民から見れば「遅すぎる判断」だった。南スーダンのPKO部隊の「日報」隠し問題は、稲田氏が国会で「(陸上自衛隊では)日報は紙・電子媒体を問わず廃棄した」(今年2月20日)と答弁したのが発端だ。だが、当時、稲田氏はすでに日報が見つかった報告を受けており、陸自幹部たちとの協議で「明日なんて答えよう」などと話していたとするメモの存在が閉会中審査当日に報じられた。つまりは確信犯でウソをついていたことになる。
森友学園問題では籠池泰典・前理事長との関係を国会で追及され、「学園の顧問だったことも相談を受けたこともない」と断言。籠池夫妻が稲田氏に法律相談に乗ってもらったと証言しても「全くの虚偽だ」とシラを切り通した。
いざ稲田氏が森友側弁護人として出廷した裁判所の記録が発覚すると「私の記憶違い」と言ってのけて、何の責任も取らなかった。都議選中の自衛隊政治利用発言も「誤解を招きかねない発言に関して撤回したい」と“誤解”を連発。発言を誤解したメディアが悪いといわんばかりだった。そうした“ウソの蓄積”があったからこそ、防衛省内から内部情報が流出し、見せしめのように集中砲火をあびたのだ。
「稲田氏は防衛特別監察の結果報告が出た段階で陸上幕僚長に監督責任を取らせて更迭する人事を固めていた。防衛省・自衛隊内部では“責任転嫁して逃げるのか”と不満が爆発した」(自民党防衛族議員)