スポーツ

嫌な記憶が尾を引く馬のトラウマを角居勝彦調教師が語る

角居勝彦調教師が馬のトラウマを語る

 Traumaとはドイツ語で“精神的外傷”のこと。ある経験がその後の行動に強い影響を持つことをいう。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、馬にもトラウマは影響するのかについての分析をお届けする。

 * * *
 馬のトラウマ。調教師にとって非常に悩ましい、メンタルの問題です。

 次走に悪影響を及ぼす例として、僅差負けがあると以前に書きました。直線で競り合ってゴール板を2着か3着で過ぎたとき、「勝てると思ったのに、抜けなかった(抜かされた)」と馬が認識する。同じ相手に3回も負けると劣等感を持つし、相手が変わった次走でもラストのせめぎ合いに自信を持てなくなってしまう。オレはベストを尽くしても勝てないんだ、というトラウマです。後方からよく追い込んでの2着とでは、馬の感じ方が違うんですね。

 負けたとしても、競った経験がプラスになる場合もあります。たとえば着外の続いていた馬が地方交流で走って2着に入った。相手関係が強いわけではないから、中央に戻っても人気薄。そういう馬が好走することがある。

 馬群に沈むばかりで、他の馬のお尻を見ているだけだったのが、上位に来たことで、風景が変わった。前には1頭だけ。それまでは諦める気持ちが勝っていたのが、「今度あの馬を抜けば1着だ!」とモチベーションが上がることがあるかもしれない。「勝ち負けに持ち込めるぞ」という自信が芽生えたんですね。

 しかも2着で走ってゴールしたら、厩務員さんがニコニコしながら「何だ、がんばればいい競馬ができるじゃないか」とばかりに、体を撫でてくれる。馬は周りの人間が喜んでいる姿がうれしいと感じる動物だと思います。競り合ってがんばれば、また喜んでくれるかなと思ってがんばる。とても健気ですよね。

関連キーワード

関連記事

トピックス

6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
19年ぶりに春のセンバツを優勝した横浜高校
【スーパー中学生たちの「スカウト合戦」最前線】今春センバツを制した横浜と出場を逃した大阪桐蔭の差はどこにあったのか
週刊ポスト
「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン