手っ取り早いダイエット法として誰もが一度は実践したことがあるだろう。米やパン(炭水化物)、肉類(脂質)などを極力控えて腹八分目を心掛ける「カロリー制限」である。だが、そんな空腹に耐える日々が“無意味な努力”だと知ったら、がっくりと肩を落とす人も少なくないはず。
『カロリー制限の大罪』(幻冬舎新書)の著者で、北里研究所病院・糖尿病センター長の山田悟氏に、カロリー制限に対する世の中の思い込みや誤解を解いてもらった。
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──カロリー制限は、1日の食事量を減らして高カロリーの食べ物を控えれば、徐々に効果が表れるポピュラーなダイエット法だと信じて疑わなかったのですが。
山田:もちろん、私もカロリー制限による短期的な体重減量効果は否定しません。ただ、摂取するカロリーの量を減らしてお腹をすかせた状態で食事を止めると、一時的に体重は落ちても、やがて空腹に耐えられなくなりがちです。食事を我慢しきれなくなった段階でカロリー摂取がもとに戻る方がほとんどで、結局は体重も元に戻ることになります。これがリバウンドと呼ばれる現象です。
短期的に成果を出しても、継続がツラくなってお腹いっぱい食べてしまいリバウンドした経験がある人は読者の中にも多いのではないでしょうか。カロリー制限で体重を減らすと、一緒に筋肉や骨が削れてしまう一方、リバウンドするときは体脂肪だけで戻ります。こうして「ヨーヨー現象」ともいわれるリバウンドを繰り返すことによって、筋肉が薄っぺらく体脂肪率の高い体になってしまうのです。そうなると、ますます痩せにくくなります。
──日本人は1日平均約2300kcal(キロカロリー)のエネルギーを摂取すべしと言われていますが、そもそも食べた物のカロリーを正確に計ることは難しい。
山田:最近は外食店でもメニューのカロリー表示をしているところも増えましたが、自分が食べたと自覚したカロリー量と、実際に摂取しているカロリー量には大きな誤差があるものです。
細かく1日の食事を記録している人でも、実際の摂取カロリーの75~80%、感覚頼みでカロリー制限している人は60%程度低く見積もっている傾向があります。しかも、太った人ほどそのブレが大きいことが分かっています。