その父は娘が田園調布雙葉高校を中退して米国に留学中に家を出た。
野田氏は残された母・弘子さんを支え、一方の弘子さんは野田氏が選挙に出ると、〈野田聖子 母〉の名刺を持って選挙区を回り、娘の選挙活動を支え続けたことで知られるが、実は、家を出た父もひそかに娘の政治活動を支えていた。
野田氏の政治資金収支報告書を辿るとそのことがわかる。確認できるだけでも、稔氏は2000年から14年間にわたって野田氏の資金管理団体『二十一世紀の会』に毎年個人献金の上限150万円を寄附し続けた。
さらに10年ほど前から献金の質が大きく変わった。『二十一世紀の会』の毎年150万円、『野田聖子後援会連合会』にも毎年150万円、さらに野田氏の『自民党岐阜県第一選挙区支部』を加えた3団体に献金がなされ、寄附金額がハネ上がったのだ。1つの政治団体への個人献金の上限は150万円だが、政党や支部への献金は年間2000万円まで認められる。
稔氏は野田氏の3度目の入閣の晴れ姿を見ることができずに2015年7月に83歳で亡くなったが、娘への献金総額は3団体で8050万円に達し、そのうち4750万円が党支部に集中的(7年間)に献金されていた。とくに2011年は政党支部だけで上限に近い1950万円が一度に寄附された。税法が専門の浦野広明・立正大学法学部客員教授がこう疑問を呈する。
「政治献金は寄附する側に所得税の税額控除が認められ、大きな節税ができる。しかも親から子に献金する場合、それに加えて受け取る側も贈与税がかからない。そもそも贈与税は、相続税を補完する税金という性格を持つ。生前贈与で相続税が払われないのを防ぐために課税するものですが、そこに政治団体や政党支部への寄附を絡ませることでこの贈与税を逃れることができる。
高齢になった父から亡くなる前の数年間に政治団体などを受け皿として巨額の献金を受けた野田氏は、一般の国民と同じように相続した場合に比べてかなりの額の課税逃れができた可能性があります」