7月29日、「ドラゴンクエスト」シリーズの本編11作目となる「ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて」が発売された。「ドラクエは」は昨年30周年を迎え、本作も販売本数は2日間で200万本以上と好調だ。シリーズ最新作をプレイした53歳フリーライター・神田憲行氏の体験記をお届けする。
* * *
私は「ドラクエ」から人生で大切な教訓を学んだことがある。
妻と結婚する前、付き合っていたころの話である。初めて妻が私の部屋に来て、手料理を振る舞ってくれることになり、食材だけでなく鍋、包丁まで持って妻は私の部屋にやってきた(鍋も包丁も持たないような生活を当時の私は送っていたのだ)。
彼女が部屋に来たちょうどそのとき、私はリビングのテレビで「ドラゴンクエスト8 空と海と大地と呪われし姫君」(2004年発売)をプレイ中だった。彼女がわざわざ料理を作りに来てくれたのに、ふんぞり返ってゲームをしているわけにはいかない。
「な、なにか手伝おうか」
コントローラーを置いて立ち上がろうとする私を彼女が押しとどめた。
「いいのいいの。そのままゲームやってて」
えっほんまに? なんて良い人なんだ。僕に好き勝手にやらせてくれる。私は感激にひたりながら、コントローラーを持ち直した。
それから一緒に住むようになり、結婚したあとの09年。私はリビングのソファに寝っ転がりながら、福引きかなにかでもらったニンテンドーDSで「ドゴンクエスト9 星空の守り人」(09年発売)をプレイしていた。
仕事から妻が疲れ切った表情で帰ってきた。
「ちょっとどいて」
硬い声に素直に自室に引き下がる。ちょっとして、「ドサッ」という音がした。なにかが外に落ちた感じだ。窓から外を見ると、家の前のアスファルトの路上に本のようなものが落ちている。
嫌な予感がした。慌てて外に出て落ちていたものを拾い上げると、やはり私が大切にしていたドラクエの攻略本だった。リビングに置いたままだったのを妻が腹立ちまぎれに窓から投げ捨てたのである。
攻略本の泥を払いながら、そのとき私の胸に教訓が刻まれたのである。
《ドラクエの作品と作品の間くらいの期間で、女性の態度は180度変わる》
それから「ドラクエ」はプレイしていなかった。持っていないゲーム機に移植されたり、オンライン版はなにか違うと感じていたからだ。