政府の「働き方改革」の論議が、いよいよ大詰めを迎えている。今秋の臨時国会では、「同一労働同一賃金」や「残業時間の上限規制」、さらに「高度プロフェッショナル制度」など、働き方をめぐる新たなルールづくりが俎上に載せられるとみられる。そんな中、話題の新刊『もっとやりたい仕事がある!』(小学館刊)を上梓したジャーナリストの池上彰氏が、同書で現在の日本人の働き方をめぐる問題に切り込んでいる。
「氷河期」とまでいわれた厳しい時期を経て、今の就職活動は“売り手市場”になっているといわれる。しかし、その一方で、長時間労働の是正や労働生産性の向上など、これから日本人の働き方や仕事観が激変する可能性もある。同書にはこう記されている。
〈日本人の「働き方」が大きく変わろうとしています。近年、ブラック企業やブラックバイトが社会問題となり、日本企業における過重労働がクローズアップされています。2016年には女性社員の過労自殺問題で日本最大の広告会社・電通の幹部が書類送検され、同社社長が辞任。
安倍晋三政権は労働時間の規制や同一労働同一賃金の推進といった「働き方改革」を推進し、厚生労働省が過重労働撲滅に向けて行政指導を強化するなど、国が本気で改革に乗り出しました。……まさに潮目が変わり(Sea Change)、私たちの目の前に新しい風景が広がろうとしています。〉(「プロローグ」より。以下同)
潮目が変わりつつあるのは、日本だけではない。経済格差を広げるグローバリゼーションの嵐は今、世界中を席巻している。
トランプ現象を生んだ米国では、低学歴の白人労働者が生活苦にあえいでいるが、これは決して“対岸の火事”ではないと池上氏は指摘している。
〈いまの米国で高い給料を稼ぐのは「IT」と「金融」です。そうした職種で活躍できるスキルを身につけるには、4年制大学の勉強では足りず、大学院の修了まで求められ、学歴が足りないと結果的に貧困に陥ってしまいます。
日本の近未来もこうした“アメリカナイズ”が進むでしょう。しかも昔ならば、手に技術があれば食いっぱぐれは避けられましたが、今後はITによる技術の代替が進み、より一層生き残ることが難しくなると予想されます。〉
また、AI(人工知能)やロボット技術の発達により、「なくなる仕事」や「AIに代替可能な職業」が増えていくとも予想されている。そうした中での仕事選びは、従来とはまた違った難しさがある。