「僕は個々の間違いより、政治家たちの根源的な教養の浅さを問題視していて、だから黙読に比べて効率の悪い音読をあえて勧めてもいる。例えばありがとうという言葉を、有り難いという本来の意味に立ち返って使うのと、単に記号的に使うのでは全然違いますし、日本語が今の形になるまでの長い道程や日本の文化的地層に触れる、音読は絶好の機会でもあるんです」

◆薄っぺらな今のクールジャパン

 学者業の傍ら私塾を開き、論語の朗読や漢字の由来を教える著者が、若干の干が干すではなく〈「一」と「十」〉だと例外を見抜けるのも、膨大な文献を精査し、現象から法則を導く人だから。これは訓読すると〈一のごとく、十のごとし〉となる一種の〈言葉遊び〉で、その正解ありきではない作業の途方もなさが行間からも伝わるだけに、頭が下がる。

「清朝では考証学といって、日本では本居宣長もやってますね。日本書紀のこの部分はどの漢籍の何を引いたとか、文献の山からたった1行を探り当てる作業を。学問とは本来そうやって時間をかけて答えを見つけていくもので、政治もそうでしょう。みんなでじっくり議論して、よりよい答えを探るしかない。

 その過程を軽んじ、何でも数の論理で決めたがる今の政治を政治とは呼べないし、じっくり物を考え、先人の歩みに思いを馳せる余裕を取り戻すために本書を書いた僕には、今のクールジャパンという言葉が薄っぺらに思えてならないんですよ。本物のクールには近代日本語の形成に尽力した『日本語を作った男』(2016年)こと上田万年や漱石のように、もっと熱さや歴史的敬意が必要なんじゃないかって」

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン