1970年代から1990年代前半にかけて、「芸能人水泳大会」といえば、アイドルの登竜門的存在でもあった。泳ぎは苦手でクロールでの息つぎもままならない芳本美代子にとって、水泳大会は試練そのものだった。
「だからといって、事前に練習するわけでもないんですよ。“私は大丈夫。絶対に泳げる”と何の根拠もなく、自分に暗示をかけていました。それで何とかなるから不思議ですよね(笑い)」(芳本。以下「」内同)
水上に1列に並んだ男性陣が1人の女性をプールサイドまで運ぶ「人間宅配便」なる競技では、必要以上に体を触られて半べそをかくアイドルもいた一方、騎馬戦ではガチンコの対決が繰り広げられていた。芳本も、どんな競技でも一心不乱に取り組んだ。
「NOという選択肢はなかったですね。高さ10メートルからの高飛び込みは本当に怖かった。足が竦んだけど、面白いリアクションをするなり、競技で勝つなりしないと、出場シーンがカットされちゃう。100人くらい出場している中で、何とか目立とうと必死でした。
夕暮れ時、騎馬戦が始まる前だけ、ちょっと雰囲気が変わるんです。今までいなかった人が急に参加し始める。アイドルとは様子の違ったビキニの女性たちが……」
芳本が出場した頃から、意図的に胸を露出するポロリ要員が目玉のひとつとなっていた。